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頬のリフトアップ治療の種類と効果
頬がたるむとほうれい線など深いシワができ、かなり老けてしまいます。頬のたるみをリフトアップするには、どのような施術をするべきでしょうか。また、失敗や副作用、たるみの再発などはないのでしょうか。頬のリフトアップについて、形成外科医としての実績が豊富な六本木境クリニックの境先生に詳しくお話を伺いました。
頬はたるむと正面から見て目立つこともあり、目の下・ゴルゴライン・ほうれい線・口周り・マリオネットラインなどのたるみと比べても、特に気になるパーツです。
前回、顔のリフトアップ治療について、「六本木境クリニック」院長、境隆博先生に、上記のそれぞれの施術についてお話を伺いましたが、その中で、顔の正面は「リフトアップ整形の空白地」というのが美容整形では課題となっており、特に東洋人は顔の側面から引き上げても、張力がおよびにくい、ということでした。
そこで、今回は頬のリフトアップに焦点をあて、境先生にお話をお伺いします。
境先生は、形成外科医および美容外科医としてたるみ治療の豊富な経験を持ち、刺青除去手術などにおいて日本で屈指の技術力をお持ちのドクターです。
頬のリフトアップ手術の種類
Q:前回、顔のリフトアップの施術の種類についてお話をお伺いしました。基本的には頬のリフトアップの場合も、顔全体と同じような施術方法があるのでしょうか。
境先生:頬のリフトアップ治療はフェイスリフト(顔面除皺術・顔のリフトアップ)の一部のため、同じように以下のような種類があります。
(1)フェイスリフト手術(切るリフトアップ)
(3)糸によって皮膚を刺激し、肌質を向上させる治療(韓国式美容鍼、金の糸など)
(4)高周波・超音波・レーザーなどの照射系治療
(5)ヒアルロン酸・ボツリヌストキシンなどの注入・注射系治療
上記の中で、(1)のフェイスリフト手術(切るリフトアップ)では、生え際の皮膚を切除し、上後方に皮膚を引き上げて縫合します。頬の皮膚は、最も外側にある皮膚、その下の皮下組織、表在性筋膜(SMAS)、表情筋、骨膜、骨、という層になっており、どこの深さまで処理を行うかで、以下のように分類されます。
(1)皮膚の剥離・切除・縫縮だけを行うもの
(2)表在性筋膜(SMAS)の処理を行うもの
(3)骨膜下の剥離を伴うもの
※上記の施術方法について詳しくは『顔のリフトアップ(フェイスリフト)を目的とする美容整形』の記事をご参照ください。
頬のリフトアップ手術の難易度
Q:顔の正面は「リフトアップ整形の空白地」ということでしたが、頬のリフトアップも難しいのでしょうか?
境先生:頬をリフトアップする手術(頬のリフト)だけをフェイスリフト・ミニリフトなどと呼ぶことも多いようですが、これらは欧米で多い手術で、欧米人向きと言われています。頬骨の張り出した東洋人では、顔の側面を西洋人のようにフェイスリフトによる張力がほうれい線やマリオネットラインのような正面の部分に及びにくく苦戦しているようです。そのため、日本では東洋人にもより効果を出すために様々な工夫がされています。
効果が出にくい、という点以外にも、いわゆる「後戻り」しやすい(たるみが再発しやすい)という問題点があります。それを改善し、効果を長持ちさせるため、「支持靭帯(リガメント)」と呼ばれる組織を利用した方法も実施されています。
支持靭帯(リガメント)を利用した方法とは
Q: 「支持靭帯(リガメント)」とはどのような組織なのでしょうか。また、それを使用した頬のリフトアップ手術の内容について教えてください。
境先生:「リガメント」とは、顔の皮膚を骨に固定している線維組織です。リガメント付近の皮膚は、リガメントによって骨に固定されているため、あまりたるみません。
しかし、リガメントとリガメントの間の皮膚は固定されていないため、たるみが発生します。リガメントがあると、耳付近の皮膚を切除し、引き上げても、リガメントが邪魔をして、リガメントの向こう側のたるみが解消されにくいという問題が発生します。
そのため、引き揚げの邪魔をするリガメントを切断し、引き上げを行うのがリガメント法です。
リガメントを切断するだけではなく、リガメントを引き上げた後の場所に再度糸で固定して余分な皮を切除することで施術後に再びたるみが発生しにくくすることができます。
ただし、リガメント法はSMASの下での操作となりますので、やはり侵襲(医療行為などによって生体を傷つけること、手術操作自体の大きさ、これによって、人体に対する影響・リスクなどが増加する。)が大きく、ダウンタイムも長くなります。
頬のリフトアップ手術の問題点
Q:顔の正面に効果が出にくい、という以外に、頬のリフトアップ手術で問題となることはありますか?
境先生:前回もお話ししましたが、最大の欠点は傷跡が目立つことです。
耳前部から側頭部の毛髪部や髪の生え際を切開・剥離し、余分な皮膚を切って縫い縮める施術が多いですが、そうすると、もみあげの位置がずれ、「毛髪が生えているべき部分に生えておらず、生えていないはずのところに生えている」というように、パッチワーク状になってしまうことがあります。
もみあげの位置がずれる点については、植毛を行うとよい、という意見もありますが、髪の毛をアップやショートにしたり、耳を髪の毛でかくすことなく暮らしてゆくことは、基本的にできなくなるリスクがあります。
また、リフトアップ手術で耳が変形してしまうことがあります。具体的には、顔の側面に沿って寝ていた耳が顔の前方向を向いて立ってしまい、前から見える耳の面積が多くなり、耳自体が大きく見えてしまうことがあります。また、耳たぶが伸びて三角に見えるなど、普段診療をしていても、修正手術が必要だと思われるほど、重度に耳が変形してしまった患者さんを目にすることがあります。
さらに、傷跡は白いため、東洋人の肌色だと、どうしても西欧人よりも目立ちがちですし、切開・剥離範囲が狭いと効果があまり出ず、範囲が広いと表情筋と癒着を起こし、表情によってはくぼみが出てしまうことがあります。
頬のリフトアップ手術の現状
Q:上述のような問題を知ると、確かに切る手術を躊躇する方は多くなるかと思います。顔全体のリフトアップの記事でもお伺いしましたが、やはり近年は「ローリスク・ローリターン」の施術が増えているのでしょうか?
境先生:はい、フェイスリフトアップと同様、頬のリフトアップでも、「ローリスク、ローリターン化」は進んでおり、糸のフェイスリフト(スレッドリフト・フェザーリフト)が急速に普及しています。しかし、あまり効果が期待できないものや、効果が長続きしないものが多いような印象を持っています。
実際にニュースなどでも糸のフェイスリフトでのトラブルの記事が取り上げられ、その効果が長続きしないことが露呈してしまった感はぬぐえません。
※糸を使ったフェイスリストについて詳しくは、『糸を使った切らないリフトアップの種類と効果』をご覧ください。
注入系や照射系の治療について
Q:頬のたるみを改善する、というと、レーザーなど照射系や、ヒアルロン酸などを注入する施術を最初に考える患者さんも多いかと思います。これらについて、どのようにお考えでしょうか?
境先生:たるみ治療で来院する患者さんの多くは、「ほうれい線が深くなった」と思い、溝(シワ)を埋めるためにヒアルロン酸注入などを希望されます。
しかし、実際は、シワが深くなったのではなく、下の図のように、元々は高い位置にあったはずの頬の脂肪が下へ移動し、覆いかぶさってできた影がほうれい線です。
頬脂肪が下へ下へと移動すると口元にも影響が及び、口角が下がってマリオネットラインも形成されます。
また、顔の上部はボリュームが無くなり、ゴルゴラインの凹みや目の下のたるみ、クマ、くぼみが生じてきます。こうして、だんだんと顔全体がたるんで、右側の絵のようになっていきます。
そのため、ほうれい線にヒアルロン酸を注入しても、根本的な解決にはなりません。溝が盛り上がり、かえって不自然になる場合が多いのです。
Q:照射系の治療はいかがでしょうか?
境先生:照射系治療については、サーマクールのような高周波RF治療やウルセラのような超音波治療など、有名で高額なものもあります。
実際に患者さんから感想を聞いてみると、肌質の改善など様々な効果が実感できるといわれますが、たるみ治療としては直後の効果もマイルドですし、その効果が実感できる平均的持続期間は短いようです。
フェイスリフトアップの記事でお伝えした通り、個人的におススメはフラクセルのようなフラクショナルレーザーです。リピーターも多く「化粧の乗りが良くなる」という感想が一番多いようです。ただ、表皮のハリが失われることが原因で発生するたるみ毛穴や肌質の改善には良いのですが、やはり「たるみ治療」という名称に見合った改善は得られないように思います。
つまり、注射系や照射系の治療では根本的なたるみの改善にはつながらないので、やはり下へ移動してしまったボリュームを元の位置へ戻す「リフトアップ術」の方が適していると言えます。
頬のリフトアップ治療の選び方
Q:手術はダウンタイムが長かったり、傷が目立つ、耳が変形するなど手術後に問題が発生するリスクがあり、糸によるリフトアップや注射系、照射系は「ローリターン」であれば、どのように頬のリフトアップをすればいいのでしょうか。
境先生:前述の通り、頬のリフトアップには、「下へ移動してしまったボリュームを元の位置へ戻す」ということが重要です。これをなるべく安全かつ効果的に行うには、個人的には、糸によるリフトアップの一種である、スプリングスレッド(スプリングリフト)を「ストレート法」と呼ばれる手法で入れるリフトアップが最も適していると考えています。
スプリングスレッドは、フランス産の伸縮性に優れた糸(上図)をたるみの気になるところに挿入し、糸の突起を皮下組織に引っかけ、カーブをかけながら引っ張るリフトアップです。それによって下垂してしまった組織のボリュームを元の位置に移動させていき、凸凹が平らになるように仕上げます。
手法は「ストレート法」と「エックス状の挿入法」の2つがあり、どちらを採用しているかはクリニックによって異なります。
ストレート法は、上図のように、1本1本を顔のたるみ具合に合わせて、バラバラに自由に入れていく方法です。対してエックス上の挿入法は、顔に入れた糸をまとめ、頭側の糸で吊るしてエックス状に挿入します。
エックス状に挿入すると、顔は一方向に引っ張られることになり、ストレート法のように、たるみの症状に合わせて微妙に引っ張り具合に変化をつけるということができません。また、まとめた糸を固定する部分に集中的に負荷がかかり、偏頭痛などの痛みや、ゆるみが生じやすいと考えられます。
また、エックス状の挿入は、ストレート法に比べて異物が入りやすくなるため、異物反応や感染のリスクが高まります。
これらの特徴があるため、頬のリフトアップには、スプリングスレッドを「ストレート法」で入れるのをおすすめしています。
Q:確かに、「ボリューム改善」「ダウンタイムの短さ」「術後の問題発生リスクの低さ」など、全てにおいて、スプリングスレッドは頬のたるみ改善に適していそうですね。気になるのが「長持ちするのか」という点ですが、いかがでしょうか。
境先生:スプリングスレッドは、伸縮性と共に、耐久性にも優れた糸です。そのため、ストレート法で入れ、余計な負荷がかからないようにすると、非常に驚くほど効果が長続きします。
ただし、使用する糸の本数と挿入時の引っ張り加減によって、かなり変わります。ほとんどの医師は、後戻りすることを見越し、強めに引き上げる方法を採用していると思われます。しかし、バネを伸ばしっぱなしにすると早く劣化するように、スプリングスレッドも強く引っ張った状態で留置すると、早期に劣化し、緩んでしまうと考えられます。
糸の本数や引っ張り加減は、医師の判断や考え方によって大きく異なります。 また、前述の入れ方の方式(ストレート法 or エックス上の挿入法)の違いもありますので、もし頬のリフトアップをスプリングスレッドで行う場合は、内容をよく確認するようにしてください。
【取材先:六本木境クリニック】
- 所在地:東京都港区六本木3‐7‐1 THE ROPPONGI TOKYO 207
- TEL:03‐6441‐0691
- 診療時間:平日11:00~19:00、土日祝 10:00~18:00
- 休診日:水曜日
- http://www.roppongi-sakai-clinic.com/
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