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ニキビ治療の外用薬「過酸化ベンゾイル製剤」の効果

更新日:2017.11.02
公開日:2017.10.31
ドクター画像
この記事の監修者
GLOW clinic 渋谷院 院長 楠山法子

アメリカなどの海外では50年以上にわたりニキビの治療に使われているという、過酸化ベンゾイル製剤。日本でも保険適用となり、新薬として皮膚科でも処方されています。ドクター監修のもと、その効果や副作用について解説します。

2015年4月に、厚生労働省によって保険適用と承認された過酸化ベンゾイル製剤を用いた外用薬。「ニキビの特効薬」ともいわれる、その治療効果とは。また、どのようなニキビに適しているのでしょうか。副作用や個人輸入の有無についても解説します。

新薬・過酸化ベンゾイルの特徴

皮膚科で処方されるニキビ治療薬にはいくつかの種類がありますが、現状、過酸化ベンゾイルが配合された外用薬は「ベピオ」「デュアック」の2種類です。殺菌作用と角質を剥離させる作用によって、ニキビ(尋常性痤瘡:じんじょうせいざそう)治療に効果があるとされます。

過酸化ベンゾイル配合薬が保険適用の薬として厚生労働省に認可されたのは、2015年4月と比較的最近のことです。しかし、アメリカなどの海外では50年以上前からニキビの治療薬として使用されており、現在では80以上の国で過酸化ベンゾイル製剤が承認されています。

過酸化ベンゾイルのニキビ治療効果

過酸化ベンゾイルを使った治療は、ニキビ治療の中でも効果を得られることが多い方法といわれています。過酸化ベンゾイルの作用によって期待できる治療効果について、詳しく見てみましょう。

殺菌作用

過酸化ベンゾイルには強い酸化作用があります。この作用により、ニキビの主な原因となるアクネ菌や、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌の細胞膜を酸化させ、殺菌します。これによりニキビの炎症を鎮め、腫れを鎮静化させる効果が期待できます。

従来のニキビ治療では、殺菌のために抗生物質を主成分とした薬が使われていました。しかし、抗生物質には、長く使用し続けると、その抗生物質に耐性を持つ「耐性菌」(抗生物質が効かない菌)が生まれることがあるといデメリットがあります。過酸化ベンゾイルは、その作用機序から、長く使っても耐性菌が生まれないようできています。このため、抗生物質より長期的に、また、くりかえし使用することができるというメリットがあるのです。

角質剥離作用

過酸化ベンゾイルは、肌の一番表面にある角質をはがれやすくする作用があります。ニキビは、毛穴の周囲にある角質が厚くなり、それが毛穴をふさいでつまることで起こります。過酸化ベンゾイルの働きで厚くなった角質が取り除かれると、毛穴がつまりにくくなり、中にたまった菌や皮脂などが外に排出されやすくなります。

また、古い角質が取り除かれることで過酸化ベンゾイルが毛穴の奥まで入り込みやすくなるため、殺菌作用がより効果的に働くともいわれています。

治療できるニキビの種類

ニキビは、炎症の有無などで主に4種類に分けられます。そのうち、過酸化ベンゾイルが効果的といわれるのは以下のニキビです。

  • 赤ニキビ
  • 黒ニキビ
  • 白ニキビ

赤ニキビとは、炎症を起こして赤く腫れたニキビのことです。皮脂のつまった毛穴の中でアクネ菌が増殖し、ニキビが悪化して炎症を起こすのです。この炎症が毛穴の中にとどまらず、周囲の組織に広がるとニキビ跡が残ってしまうため、早めに治療することが大切です。

赤ニキビの炎症がさらにひどくなり、周りの組織まで広がって膿がたまると黄ニキビと呼ばれる状態になりますが、この黄ニキビには過酸化ベンゾイルは適さないとされています。

黒ニキビと白ニキビは、赤ニキビになる前の段階です。黒ニキビを開放面皰(めんぽう)、白ニキビを閉鎖面皰とも言います。毛穴に角質がつまって皮脂がたまり始めている初期段階のニキビを白ニキビ、毛穴に皮脂がたまって角栓(皮脂と古い角質が混ざった状態)となったものが表皮から顔を出し、酸化して黒くなったものを黒ニキビと言います。

過酸化ベンゾイルの使い方

過酸化ベンゾイルは、寝る前に1日1回、顔を洗った後の清潔な状態で適量を患部に塗ります。赤ニキビの場合は炎症が広がらないよう、ニキビにつけた後にニキビの周囲にも広めに塗り広げるのが一般的です。薬が作用するまでの期間や治療にかかる期間は一概に述べられませんが、基本的に12週間以内には効果が認められるとされます。

なお、塗り方や塗る量はその人の症状などによって異なるため、必ず医師に確認し、指示に従いましょう。

薬の保管方法

過酸化ベンゾイルを含む薬は、25℃以下の涼しい場所で保管します。薬によっては、冷蔵庫で保管することが推奨されるものもあります。ただし、凍らせてはいけないため、冷凍庫では保管しないようにしましょう。

使用中の注意事項

過酸化ベンゾイルを使用するときは、以下の点に注意しましょう。

  • 紫外線を長く浴びないこと
  • 服や髪の毛に付着しないよう注意すること
  • 目や口のまわりに使用しないこと

過酸化ベンゾイルを使用している間は紫外線を避けたほうがよいといわれています。外出するときには帽子や日傘を使用するなど、患部を紫外線から守るようにしましょう。日焼けランプなども紫外線に当たることになるため、行わないようにしてください。

また、過酸化ベンゾイルには強い漂白作用もあるため、服や髪の毛に付着しないよう注意しましょう。目や口といった粘膜のまわりにつけると、炎症を起こす場合もあります。このような部位についてしまったときは、すぐに水で洗い流してください。

妊娠中・授乳中の使用

妊娠中・授乳中の使用に関しては、安全性がまだはっきりしていません。そのため、授乳中に過酸化ベンゾイルの外用薬を使う場合は、授乳を避けたほうがよいとされています。ただ、米国皮膚科学会などでは、妊婦のニキビ治療には過酸化ベンゾイルが適していると発表しています。いずれにせよ、安全性が不確かであることに変わりはないので、妊娠中や授乳中の使用は避けるのが無難でしょう。

過酸化ベンゾイルの副作用

過酸化ベンゾイルは、以下のような副作用が報告されています。

  • 表皮が薄く剥がれる
  • 粉をふく
  • ヒリヒリ感
  • かゆみ
  • 赤み
  • 皮膚の乾燥
  • 灼熱感

このような副作用は、特に塗りはじめに多いとされています。また、他の塗り薬と一緒に使うことで皮膚の症状が悪化する場合もあるとされます。このような症状が見られたときは、すぐに医師に相談しましょう。

アレルギー反応に注意

過酸化ベンゾイルは、体質によってはアレルギー反応を起こす可能性もあります。顔や目のまわり、薬を塗った部分の強い腫れのほか、発疹、発熱などが現れた場合は、すぐに使用をやめて医師に相談してください。

また、耐性菌が発生しないことから長く使える薬ではありますが、長期間の使用でアレルギーによる接触性皮膚炎を起こす可能性があるとの報告があります。自己判断で使用を中止するのはよくありませんが、ニキビが治ってからは使用を控えることをおすすめします。

ニキビ治療に使われる過酸化ベンゾイル配合薬

現在、皮膚科で処方される過酸化ベンゾイルを配合したニキビ治療薬には、以下の2種類があります。

  • ベピオ
  • デュアック
  • エピデュオ

それぞれの特徴を簡単にご紹介します。

ベピオゲル

過酸化ベンゾイルを2.5%の濃度で配合している、白いゲル状の塗り薬です。

デュアック配合ゲル

過酸化ベンゾイルを3.0%の濃度で配合している、白から淡い黄色のゲル状の塗り薬です。過酸化ベンゾイルのほかに、クリンダマイシンという抗生物質も配合されています。

エピデュオ

アダパレンを0.1%、過酸化ベンゾイルを2.5%で配合。白色から微黄色の不透明なゲル剤のニキビ治療薬。

過酸化ベンゾイル製剤の通販はNG

過酸化ベンゾイルが配合された薬は、通販などで個人輸入もできます。しかし、過酸化ベンゾイルは効果が強い一方で副作用もある薬です。また、海外の過酸化ベンゾイル製剤の中には、濃度が高く刺激が強いものもあるといわれています。

以前は日本では承認されていなかったため、海外から輸入するなどの方法しかありませんでしたが、今は保険適用で処方してもらうことができる薬です。トラブルを避けるためにも、皮膚科を受診して処方してもらうようにしましょう。

まとめ

過酸化ベンゾイルは、世界的には1960年頃から使われているポピュラーな薬ですが、皮膚の刺激感やかゆみ、赤みといった副作用もあるため、日本では近年まで承認されていませんでした。2015年には日本国内でも承認され、現在は医療機関でも処方できる薬となっています。過酸化ベンゾイル製剤はニキビ治療への高い効果が期待できる薬ですが、刺激症状を生じる可能性のある薬剤です。初めて使用する方も、これまで通販などに頼っていた方も、安全に使用するためにも、医師の指導のもと正しく使用することが重要である。

ニキビは、治療が早ければ早いほど完治までの期間が短く、また、跡が残る可能性も低くすることができます。生理現象だからと放置せず、できれば早めに皮膚科に相談しましょう。

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