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お尻の出来物から膿が出た時の対処法
お尻の出来物は、自分では確認しにくいもののため、気がついたら膿が出てしまっていたということもあります。ここでは、お尻の出来物から膿が出る原因と、出てしまった場合の処置方法について、ドクター監修のもと解説します。
お尻の出来物は、種類によっては放置すると膿が出てしまうものもあります。膿が出る出来物の種類と原因、出てしまった時の対処方法について解説します。
膿の原因になる疾患とは
お尻の出来物としてもっとも頻発するのは、毛嚢炎(毛包炎)から生じた癤(せつ)、いわゆる「おでき」といわれるものです。
毛嚢炎は毛穴の皮膚に細菌(ブドウ球菌)が感染し、繁殖することで発生します。毛嚢炎の感染と炎症が毛穴周囲の皮膚組織や皮下組織まで広がり、赤く腫れて疼痛をともなうようになると癤(せつ)、いわゆる「おでき」になります。おできは、膿のたまり場(皮下膿瘍)を形成して悪化することもあるため、注意が必要です。
膿の原因がおできではない場合は、お尻にできた出来物がつぶれて膿が出たと考えられます。この場合、粉瘤(ふんりゅう)の可能性があります。粉瘤は、お尻の皮膚広域に発生します。
※粉瘤について、詳しくは『腫れや膿が出てくるお尻のしこり・粉瘤とは?』をご覧ください。
おできや粉瘤(ふんりゅう)に比べると頻度は少ないですが、お尻から膿が出ているときは毛巣洞(もうそうどう)の可能性もあります。
毛巣洞は毛巣瘻(もうそうろう)とも呼ばれ、仙骨部(肛門の少し上)の皮膚に小さな穴が開いている状態です。生まれつきのものと、体毛が毛穴に入り込んで生じる後天的なものがあり、普段は症状がありませんが、細菌に感染すると炎症を起こして腫れたり、膿を出すことがあります。子供のお尻に小さな穴や窪みを見つけたら、念のため医療機関で見てもらうことをおすすめします。
さらに、肛門の近くから膿が出ている場合は、痔の一種である「痔ろう」の可能性もあります。
痔ろうとは、肛門の周りが炎症を起こすことで膿がたまる痔で、最終的には腸から肛門周辺の皮膚にトンネルができてしまうのが特徴です。腸にある肛門腺に便が入ることで感染を引き起こし、膿がたまります。膿が出てしまうと楽になりますが、痔ろうの治療を行わないと何度も膿が出てしまい、痛みや熱が出ることもあります。
膿が出た場合の対処法
疾患別に、膿が出た時の対処法を見ていきましょう。
おでき(毛嚢炎)
おできの場合、症状が軽ければ自然に治癒することもありますし、市販の治療薬で対処することも可能です。しかしながら、感染が進んで膿が出るほどの状態になってしまったときは、患部の洗浄や排膿処置とともに、抗生物質の内服が必要となります。自己流で対処せずに、皮膚科や形成外科を受診しましょう。
粉瘤(ふんりゅう)
粉瘤も、セルフケアで治すのは不可能です。良性の腫瘍なので、必ずしも治療が必要というわけではありませんが、膿が出たということは化膿しているということです。赤く腫れていることが多く、痛みもひどいでしょう。
粉瘤に感染すると膿のニオイが強いことが多く、病院で患部を洗浄したり、残った膿を取り除いたりするなどの処置が必要になるケースがほとんどです。また、抗生物質を処方するなどして炎症を抑える治療が必要です。炎症が治まったら、いずれ手術にて粉瘤を摘出することをおすすめします。
毛巣洞(もうそうどう)
お尻に毛巣洞と呼ばれる小さな穴がある場合は、便が付着するなどして不潔にならないよう気をつけることが大切です。患部が炎症を起こしている場合は、抗生物質や炎症を抑える薬物を投与したり、皮膚を切開したりして膿を出す必要があります。穴ごと完全に治すには、毛が皮膚に入り込んだところも含めて切除する手術が必要です。
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)
突然の肛門の痛みや腫れ、排便以外の安静時にも痛みがだんだん強くなり、夜に眠れなかったり発熱したりすることがあります。その場合、緊急的に排膿処置が必要なため、お近くの肛門科を受診してください。
2014年、厚生労働省による全国調査によると、看板に肛門科とあっても、約10%のみが肛門科をメインとしているということがわかっています。明らかに膿瘍とわかれば、外科や消化器外科でも処置が可能ですが、その後の管理に違いが出てきやすいため、やはり肛門を専門とする病院をおすすめします。なぜなら、その後、約半分のケースで痔ろうとなり、治療が必要となるためです。
しかし、地方では専門の病院が少ないのが現状のため、まずは近くの病院で診てもらいましょう。
痔ろう
痔ろうは、市販薬で治すことはできないため、病院での手術治療が必要になります。痔ろうとは、肛門にある孔から固い管ができて感染している状態です。その管が、肛門の外の周りに出てきて液や膿、血液が出たりします。また、ときには腫れて痛くなることもあります。あるいは、本人がわからず座ったときの違和感で進行してしまうこともあります。
診断は、明らかに膿の出る孔がわかる場合は、外科、消化器外科、皮膚科でも可能ですが、それ以外は肛門科に行かないと適切な治療(手術)にまで達しないことが多いため、肛門専門の病院を受診しましょう。
皮膚科や形成外科では、対症療法(切開排膿や抗生物質の投与)のみの治療となるため、その後の治療は肛門科を紹介してもらいましょう。
イボ痔
トイレットペーパーに鮮血が付いたり、ポタポタと出血するような場合は、イボ痔や切れ痔の可能性があります。なかでも肛門付近の血管の腫れなどにより、肛門内側または外側に痔核(イボ)ができるイボ痔は、症状や進行の度合いによってさまざまな治療が行われます。
軽度の脱肛や出血をともなうイボ痔の場合は、塗り薬や飲み薬による治療や、生活習慣の改善指導などの保存療法が取られますが、症状が進行している場合は、痔核を切り取る「結紮(けっさつ)切除術」や、「ALTA療法(ジオン注射)」などが行われます。
ほとんどの痔核の治療は、外科、消化器外科で可能ですが、ALTA療法(ジオン注射)や診断・治療が難しい例では、症例の多い肛門科専門の病院をおすすめします。
肛門付近は、適度に清潔にするとともに、長時間座りっぱなしや、腹部や肛門に負担がかかることはできるだけ避けてください。また、痔の療養には毎日の入浴が推奨されていますが、出血や膿が出た場合は病院へ行って相談してください。
切れ痔(裂肛)
ほとんどの場合、外用剤や排便習慣の改善で治り、肛門科以外でも対応可能かもしれません。傷が小さく、痛みがあって診察が難しいときもあります。あるいは、進行してひどい痛みがしばらく続いたり、肛門が細くなっていたりする場合もあります。
こういう場合、肛門を見る件数が少ないところでは、診断・治療が難しいかもしれません(たとえば、血便があるのに、大腸内視鏡を行い、なんでもないと言われるなど)。また、一部では手術が必要な場合もあるため、肛門専門の病院に行きましょう。
まとめ
出来物から膿が出たら、自分で潰すという方法をとる人もいますが、黒ずみやシミだけでなく、痛みが残る場合もあります。また、バイ菌が入って腫れてしまうなど、出来物を悪化させることにもなりかねないので、潰さないようにしましょう。処置をしないで我慢するというのもいけません。
他人にお尻を診てもらうのは恥ずかしいものですが、トラブルの悪化や手術跡などを防ぐためにも、できるだけ早い段階で正しいケアを行いましょう。
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