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肌の乾燥する原因と対策方法

更新日:2017.11.21
公開日:2013.12.13
ドクター画像
この記事の監修者
マノメディカルクリニック院長 馬野詠子

一生懸命スキンケアをしているのに、なかなか改善しない乾燥肌。乾燥肌の原因は、間違ったスキンケアから日常生活、食事など、あらゆるところに潜んでいます。ドクター監修のもと、乾燥肌の原因と対策方法について詳しく説明します。

肌の乾燥に悩み、さまざまな対策を試しているものの、なかなか改善されないという方に抑えてほしいのが、「肌が乾燥する原因」です。肌の乾燥する原因はいくつか考えられることがあり、それに合った対策を行っていくことが大切だと考えられます。

ここでは、肌が乾燥する原因についてそのメカニズムから深くチェックし、あわせて改善策をご紹介します。

肌の乾燥のメカニズム

肌が乾燥するのは、肌が水分を蓄えておく力が低下しているのが原因と考えられます。しかし、そもそも肌はどのようなメカニズムでうるおいを保っているのでしょうか。

肌は、一番表面から「表皮」「真皮」「皮下組織」という層構造になっています。表皮はさらに表面から「角質層」「顆粒層(かりゅうそう)」「有棘層(ゆうきょくそう)」「基底層(きていそう)」の4層の構造になっています。

このうち、身体の一番表面にある角質層にはブロック状の角質細胞が重なっており、その間を、セラミドを主成分とした細胞間脂質が埋めています。角質細胞はレンガ、細胞間脂質はレンガを接着するセメントと考えるとわかりやすいでしょう。セラミドが角質細胞同士をしっかりつなぎ合わせていることで、肌の内側から水分が蒸発するのを防いだり、外からの刺激から肌を守ったりすることができます。これを肌バリア機能とも言います。

本来、肌の角質層には、このような肌のバリア機能が備わっています。そのため、正しいスキンケアをして角質層が健全であれば、それほど乾燥に悩まされることはないはずなのです。

それではなぜ、乾燥肌の人は保湿能力が低下したのでしょうか。

乾燥肌にならないための肌の水分保持とは

乾燥肌の原因をご説明する前に、まずは肌が水分を保持する三大要素を再確認しましょう。

 

 

(1)皮脂膜

  • 保湿貢献度:約2%
  • 成分/生成方法:毛穴から分泌された皮脂と、汗腺から分泌された汗がまざってできた「天然」のクリーム
  • 役割:角質がはがれるのを防いだり、肌の水分が蒸発するのを防ぎます。肌の滑らかさを保つのも皮脂の役割です。

皮脂は肌を正常に保つのに大変重要な役割を果たしていますが、肌の水分保持に対する貢献度は約2%程度と低く、98%は角質層の細胞間脂質とNMF(天然保湿因子)が担っています。

(2)NMF(天然保湿因子)

  • 保湿貢献度:約18%程度
  • 成分:アミノ酸、PCA(ピロリドンカルボン酸)、ミネラル、尿素などによって構成されています。
  • 生成方法:角質層の下にある顆粒層の細胞内のタンパク質が角質層に押し上げられていく過程でNMFへと変化して生成されます。
  • 役割:水分を吸着して角質層に保持し、肌の柔軟性と弾力性を保ちます。

肌の水分保持力の約18%を担うのがNMF(天然保湿因子)。

NMF(細胞間脂質)のバランスが崩れると、乾燥するだけではなく、角質層の下の顆粒層が健康に育たず、ターンオーバーそのものに影響を与えてしまうといわれています。

(3)細胞間脂質(セラミドなど)

  • 保湿貢献度:約80%
  • 成分/生成方法:胞間脂質の約40%を占めるセラミドをはじめ、遊離脂肪酸、コレステロールなどからできています。
  • 生成方法:生きている角質細胞は、細胞内にセラミドが存在しますが、ターンオーバーで細胞が押し上げられて肌のもっとも表面にある角質層に到達した時に、細胞は核がなくなり死んでしまいます。そのときに細胞内のセラミドが角質層内の細胞間脂質に放出され、セラミドが細胞間に存在するようになります。
  • 役割:角質細胞同士の隙間を埋め、外部からの刺激の侵入や、体内の水分の過剰な蒸散を防ぎます。

保湿要素の約80%を占める細胞間脂質は、肌の水分を保持する点でもっとも重要な要素となります。

肌の乾燥する原因

上述のよう細胞間脂質、NMF(天然保湿因子、皮脂膜の働きを低下させる主な原因は以下の通りです。

(1)間違ったスキンケア

私たちは多くの化粧品と美容情報に囲まれ、日々せっせとスキンケアをしています。しかし、そのスキンケアが間違っていると、自ら肌の保湿能力を弱め、乾燥肌に陥ってしまっています。皮膚科を受診する人のほとんどは、皮膚疾患などが原因ではなく、スキンケアが間違っていることによって乾燥肌になっているそうです。

『乾燥、老化の原因になる間違ったスキンケアとは』では、乾燥肌を発生させる間違ったスキンケアについて詳しく解説しています。

(2)食事・食生活

極端なダイエットや偏食、ファストフードの多用には気をつけましょう。

『乾燥肌の原因は食事・食生活・栄養素にあった?』では、どのような食事や食生活が乾燥肌の原因になるのかについて解説しています。

(3)生活習慣

睡眠不足、エアコン、ストレス、入浴など、私たちの日常生活には、角質層の保湿機能を低下させる要因がたくさん潜んでいます。

『乾燥肌の原因(3)生活習慣』では、乾燥肌の原因となる生活習慣や日常生活について、詳しく解説しています。

肌の乾燥対策

今まで、肌が乾燥する原因について見てきました。基本的には、今までにご紹介した肌の乾燥する原因に対応していくことが乾燥対策になりますが、具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか。

まずは、乾燥肌のセルフケア方法を4つご紹介します。

肌の乾燥を防ぐ化粧水

肌の乾燥を防ぐうえでは、保湿ケアが欠かせません。シンプルな保湿ケアとして「化粧水」と「クリーム」を使用して肌に美容成分を届ける方法があります。ここでは、化粧水の選び方をご紹介しましょう。

化粧水と言えば「肌に水分を補うもの」と考えられていました。しかし、今では化粧水は「水溶性の美容成分を肌に届けるもの」という考え方が一般的になりつつあります。そのため、化粧水は配合されている成分に着目して選ぶとよいでしょう。

肌の保水能力が低下している乾燥肌の場合、水分を吸着して肌のうるおいを保つ助けをしてくれる成分を配合した化粧水がおすすめです。代表的な成分として、以下のものがあります。

  • ヒアルロン酸
  • コラーゲン・エラスチン
  • セラミド
  • グリセリン

基本的には、このような保湿成分は化粧水よりもクリームに多く含まれる傾向があります。

化粧水の中で、特に保湿成分が多く配合されたものを探したい場合は、成分表示を1つの目安にするとよいでしょう。厳密な配合量は明記されていない製品がほとんどですが、成分表示には配合量の多いものから順に記載されています。そのため「できるだけ上の方に保湿成分が記載されているもの」を選ぶことが、保湿力の高い化粧水を選ぶための目安になると考えられるでしょう。

肌の乾燥を防ぐクリーム

クリームは「化粧水で水分を与えたあとに油分でふたをするためのもの」と考える方が多いかもしれません。しかし、化粧水の項目でも述べたように、保湿ケアの現在の考え方は「保湿成分を肌に届ける」というものです。この観点で言うと、クリームの役割は「油溶性の保湿成分を肌に届けること」と考えられます。

クリームに配合される保湿成分の例として、以下のものがあげられます。

  • セラミド
  • スフィンゴ脂質(ステアリン酸コレステロール)
  • 水素添加大豆レシチン

肌の乾燥がひどい場合は、化粧水もクリームも保湿成分が配合されたものを選ぶとよいでしょう。

スキンケア方法の見直し

肌が乾燥する原因のひとつとして、間違ったスキンケア方法をあげました。スキンケアの中で特に気をつけたいのが、「肌を刺激しないこと」です。たとえば、洗顔時などにこすりすぎることは、肌の乾燥だけではなく、シミなどの肌トラブルを引き起こす可能性もあります。スキンケアの中では、以下のポイントに気をつけるようにしましょう。

  • ふき取りタイプのクレンジングや化粧水を頻繁に使わない
  • 洗顔時やクリームによる保湿時には必要以上になで回さない
  • ベースメイクは塗りこまずに軽い力で叩き込む
  • 化粧水は叩き込まず顔を覆って浸透させる

スキンケアの際は、とにかくやさしく、できるだけ肌に指が触れないことを意識しましょう。

肌の乾燥によい食べ物

保湿ケアのほかに見直したいのが、食生活です。毎日の食事でとる栄養は、肌だけでなく身体を作る材料となるものです。そのため、食生活の乱れは肌のコンディションや身体の状態に影響します。その中でも、肌の細胞の生まれ変わりに関係している物質の1つとして「必須脂肪酸」があげられます。

必須脂肪酸とは、特に魚介類に多く含まれる脂質のことです。肌の健康という面で見ると、肌の水分保持力の8割を担う細胞間脂質の材料となります。この必須脂肪酸には「オメガ6系脂肪酸」と「オメガ3系脂肪酸」があります。それぞれ、どのような食品が含まれるのか簡単にご紹介します。

オメガ6系脂肪酸
コーン油、紅花油、大豆油、ごま油など
オメガ3系脂肪酸
サーモン、いわし、サバなど

オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸は3:1の割合でとるのが理想的とされていますが、現代の食生活ではオメガ3系脂肪酸が不足しがちだといわれています。また、オメガ3脂肪酸が不足することで乾燥肌に傾きがちだともいわれています。

和食はオメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸の割合が理想的だとされているため、肌の乾燥が気になる場合は食生活を見直してみるのもよいでしょう。ただし、「これさえ食べていれば大丈夫」というものはありません。野菜や肉も含め、さまざまな食品をとって栄養バランスのよい食事を意識しましょう。

皮膚疾患による乾燥肌はクリニックへ

前述した化粧水やクリームによる保湿ケアや、食事の見直しによって肌の状態が改善する方も多いかもしれません。

しかし、アトピー性皮膚炎や、乾燥性湿疹などの皮膚疾患は自己流の対処法では悪化させてしまうリスクがあるため、皮膚疾患の心配があれば、早急に皮膚科を受診するようにしましょう。

乾燥肌の改善に向けて、水分保持機能を持つセラミドやヒアルロン酸の生成メカニズムについて知りたい方は、「セラミドの皮膚内での役割」や「ヒアルロン酸の皮膚内での働きと生成のメカニズム」をご覧ください。また、乾燥肌用の化粧水選びのポイントや必要な成分について知りたい方は、「乾燥肌の化粧品選び(3)化粧水」をご覧ください。

まとめ

肌が乾燥する原因は、肌の水分保持力の衰えにあります。その水分保持力が衰える原因として、以下のことがあげられます。

  • こすりすぎ・洗いすぎなどの間違ったスキンケア
  • 食事の偏り
  • ストレス
  • 睡眠不足や間違った入浴法などの生活習慣
  • エアコンの使用などによる空気の乾燥

そのため、乾燥肌の根本的な対策には、食事内容をはじめとした生活習慣の見直しや、スキンケアの見直しが必要と考えられます。また、肌の乾燥を防ぐ成分が配合された化粧水やクリームを使用し、肌に保湿成分を補うことも効果的と考えられます。

保湿ケアや生活習慣の見直しをしても乾燥肌が改善しない場合や、アトピー性皮膚炎などの肌の病気が乾燥の原因となっている心配がある場合はクリニックを頼ることも考えましょう。日々の生活の中で行うケアはもちろん大切ですが、仮に皮膚の病気が原因となっている場合、セルフケアの方法によっては悪化する可能性も考えられます。自己流の乾燥肌ケアだけにこだわりすぎないことをおすすめします。

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