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アトピー性皮膚炎の原因と治療
乳幼児から成人までアトピーに悩む方はたくさんいますが、その原因はさまざまです。遺伝や生活環境、食べ物などによるアレルギー反応など、ケア方法も変わってきます。アトピーの原因と治療について、ドクター監修のもと解説します。
強いかゆみや湿疹に悩まされる「アトピー性皮膚炎」。乳幼児に多い病気ですが、近年では大人のアトピーも増えています。アトピーになる原因や悪化因子はさまざまで、遺伝的素因と、種々の環境因子が加わっておこるといわれています。もちろんこれらの条件下においても、発症する方がいれば発症しない方もいますし、子供と大人でも変わってきます。近年では戦後から変化している日本人の生活習慣や生活環境により体質そのものが変化していることもあげられます。
アトピー性皮膚炎の原因
原因は、はっきりとはわかっていませんが、皮膚のバリアー機能異常やアレルギーを起こしやすい体質などの遺伝因子に、種々の刺激やアレルギー反応、ストレスなどの環境因子が加わっておこるといわれています。アレルギーというと食べ物を思い浮かべやすいですが、アトピーの原因となるアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす物質)で多いのはハウスダストやダニ、カビです。家の中のホコリ(ハウスダスト)には、ダニがいっぱい潜んでいるので高い割合をしめています。
その他、注意するのはカビ。ここ最近でピティロスポルム(マラセチア)という菌に対して陽性反応を示す人が増えて注目されています。このカビは、誰の皮膚にも存在するのですが、顔、首、上半身の皮膚の脂の分泌が多い部分に、かゆみやフケを発生させることがあります。
以下では、アトピー性皮膚炎の原因を年代別に見ていきます。
乳幼児(1歳未満)のアトピー性皮膚炎の原因・悪化因子
赤ちゃんが発症するアトピーは、乳児アトピー性皮膚炎と呼ばれています。生後2~3か月頃から症状が現れ始め、主な原因や悪化因子として以下のようなものが考えられています。
- 母乳に含まれるアレルゲン
- ダニやハウスダスト、鳥の糞などのアレルゲン
- 入浴時の石けんやボディソープなどの含有成分
- 皮膚にもともと付着している細菌
- 空腹やおむつ交換などによるストレスの影響
- 乾燥肌
- 汗による皮膚への刺激や炎症
- 環境基準に定められる有害化学物質
2~3歳までの子供のアトピー性皮膚炎の原因・悪化因子
2~3歳の乳幼児についても、主な原因、悪化因子となるものは赤ちゃんと同様です。
大人の場合、ハウスダストなどに比べると、食べ物によるアレルギー反応は少ないのですが、小さな子供の場合は違います。特に、赤ちゃんや幼児は消化器の機能が未熟なため、アトピー性皮膚炎のアレルゲンとなる物質が、大人に比べて反応しやすいと考えられています。
食べ物でアレルゲンとなりやすいのは、卵、特に卵白です。他にも牛乳や乳製品、大豆や大豆製品、米、麦なども注意が必要です。小さい子供は、3歳を過ぎてくると消化器の機能が発達してくるので、食べ物によるアレルギー反応は少なくなります。
大人のアトピー性皮膚炎の原因・悪化因子はさまざま
大人のアトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下している状態なので、あらゆる刺激が症状を悪化させる原因になります。主な刺激物とは、
- 石けん
- 洗剤
- 化粧品などに含まれる化学成分
- 添加物
- 乾燥
- 汗やアカ
- 汚れ
などです。
また、疲れや緊張、悩みなどのストレスもアトピー性皮膚炎悪化の要因として考えられます。受験から解放されたと同時に症状が改善されたり、環境が変わることによる変化も見られたりします。逆に、新しい環境による緊張が、アトピー性皮膚炎の再発を引き起こす場合もあるようです。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の主な症状は、
- 赤み
- かゆみ
- 腫れ
- 湿疹
などで、特定の場所にくりかえしあらわれます。また、軽度のものから重度のものまでその症状はさまざまで、治療やケアの方法も症状の程度により異なります。
- 軽度
- 環境や体調・体質の変化によって軽い症状が現れている状態です。炎症は少なく、肌がカサカサに乾燥し、表面が魚のうろこのように見えることもあります。生活やスキンケアを見直すことで症状が治まる可能性があります。
- 中等症
- 強い炎症や赤みをともなう発疹、皮膚がゴワゴワに硬くなっている状態が全身の皮膚の10%未満に見られる状態です。かゆみによって睡眠障害があらわれたり、かきむしりによって症状が悪化することもあります。
- 重症
- 強い炎症が全身の10%以上30%未満にあらわれている状態です。赤みのある湿疹やプツプツと盛り上がった湿疹、ごつごつとしこりのような湿疹ができることが多く、ジクジクと汁が出たり、かさぶたになったりします。
- 最重症
- 「重症」で見てきたような症状が強い炎症が全身の30%以上に広がった状態です。
年代ごとのアトピー出現部位の違い
アトピー性皮膚炎は年齢によって症状の出る場所が異なることがあります。
- 生後2~3か月から1歳
- や頭部、耳・耳の付け根、ヒジや足首などの関節部分
- 2~10歳ごろ
- 手足の関節の内側やヒジの内側、首、耳たぶなど
- 大人
- 顔や目の周り、首や上半身に多く見られ、左右対称にあらわれやすく、長期間湿疹が続くため色素沈着をともなうこともある。
アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の治療法について見てみましょう。
赤ちゃんや幼児に対する治療
アトピー性皮膚炎は、幼小児期までに治しておくことが重要とされています。適切なスキンケアを行うことでバリア機能の低下を防げば、症状は治まっていくからです。
しかし、子供の頃にケアを怠ると肌のバリア機能は低下したままになり、次第にさまざまなアレルゲンが皮膚を通して侵入し、アレルギーが発症しやすくなってしまいます。
小児科や皮膚科では、血液検査やアレルギーテストを行うことがあります。食事制限を行う場合もありますが、成長を妨げないように、医師の指導に基づいて慎重に判断する必要があります。保湿剤などによるスキンケア、外用剤中心の薬物療法などが行われます。
大人に対する治療
大人のアトピー性皮膚炎の治療は、以下の3つが基本とされています。患者それぞれの症状や背景などを考慮したうえで、適切に組み合わせて行われます。
- 薬物療法
- 皮膚炎の状態から生じた異変に対する外用療法やスキンケア
- 悪化因子の特定や対策
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な素因も含め、さまざまな原因によって引き起こされるため、現時点において病気そのものを完治させる治療法は確立されていません。そのため、治療の目標は完治よりも「日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない程度の軽い症状」「急激に悪化することがなく、万が一悪化しても長続きしない」などを目指して行われます。
アトピー性皮膚炎の薬物療法
薬物療法としては、「アトピー性皮膚炎の症状」で見てきた症状の程度に合わせて、以下のような外用薬や内服薬が用いられます。
外用薬
- ステロイド外用薬
- カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)
- 保湿剤
アトピー性皮膚炎の炎症を鎮めるために、炎症を十分に鎮静させる作用があると認められているのがステロイド外用薬とタクロリムス軟膏です。ステロイド外用薬には、重症度に合わせたランクの薬剤を
- クリーム
- 軟膏
- ローション
- テープ剤
などさまざまな形で使用することができます。また、アトピー性皮膚炎の方の皮膚は乾燥しやすいため、保湿剤を塗って、しっかりとスキンケアを続けることが大切です。
内服薬
- 第一世代抗ヒスタミン剤(ジフェニルピラリン塩酸塩、塩酸トリプロリジンなど)
- 第二世代抗ヒスタミン剤(エバスチン、エピナスチン塩酸塩など)
- 抗ヒスタミン作用のない抗アレルギー薬(トラニラストなど)
- シクロスポリン
- 漢方薬
外用薬と併用し、かゆみを緩和させる目的で内服剤を使用することは大切な治療です。眠気や倦怠感などの副作用を考慮し、鎮静性の少ない第二世代抗ヒスタミン剤が第一選択薬とされることが多いようです。また、シクロスポリンは成人の最重症例にのみ用いられます。
まとめ
アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子や治療法について、各年代ごとに見てきました。アトピー性皮膚炎とは、かゆみをともなう慢性の皮膚炎(湿疹)です。皮膚の生理学的な異常(皮膚の乾燥やバリア機能の低下)に、さまざまな外的刺激やアレルギー反応が加わることで悪化すると考えられます。乳幼児では食物のアレルゲン、それ以降ではハウスダストやダニによる環境アレルゲンが関係しているという違いがあります。
いまだ原因や治療法が解明されていないアトピー性皮膚炎ですが、薬物療法によって炎症やかゆみを抑え、日常生活に支障がない程度の症状を目指して治療を進めることが大切です。家族や医師と連携を取りながら、生活習慣の見直しも含めた治療を行うようにしましょう。
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