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糸を使った切らないリフトアップ(フェザーリフト)の種類と効果
皮膚を切らずにたるみを改善する糸を使ったリフトアップ治療には、大きく分けると、糸によって皮膚を引き上げるフェザーリフト(スレッドリフト)と、金の糸などのように肌質を改善するものがあります。これらの糸による切らないリフトアップの効果は本当にあるのでしょうか。形成外科医としての実績が豊富な六本木境クリニックの境先生に詳しくお話を伺いました。
糸を使ったリフトアップの種類
皮膚に糸を挿入し、たるみを改善する治療には様々な種類があり、切らないたるみ治療を検討している際、どれにすればいいのか、違いはどこになるのかなど、分かりづらいのが現状です。
そこで、糸によるリフトアップ治療について、「六本木境クリニック」院長、境隆博先生にお話を伺いました。
境先生は、形成外科医および美容外科医としてたるみ治療の豊富な経験を持ち、刺青除去手術などにおいて日本で屈指の技術力をお持ちのドクターです。
糸によるリフトアップについて
Q:現在、糸による治療はあらゆるものがありますが、以前は切る治療が主流だったと聞きます。糸をつかったたるみ治療の成り立ちと現状について教えてください。
境先生:糸によるフェイスリフト・リフトアップという考え方は以前からあり、初期には切るフェイスリフトの補助手段として、結紮(けっさつ)用の糸が用いられていました。
医療行為などによって生体を傷つけることや、手術操作自体の大きさ、人体に対する影響・リスクなどを総称して「侵襲(しんしゅう)」と言いますが、切るフェイスリフトがその侵襲の大きさの割に実感できる効果の持続期間が短く、敬遠されるようになったこともあり、次第にダウンタイムの少ない治療が好まれるようになりました。
そのため糸のフェイスリフト(フェザーリフト・スレッドリフト)が急速に普及するようになってきて、それと共にたるみ治療用に特殊な構造の糸が用いられるようになりました。
様々なものが普及し、使用する側の医師も試行錯誤を繰り返した結果、現在、糸によるリフトアップの種類や分類は混乱していて、製品名由来の名称、製造会社の登録商標による名称、手術法による名称など、分類を妨げるような様々な名称が乱立しています。
糸によるリフトアップの種類
Q:続いて、糸による治療の種類や分類について教えてください。
境先生:まず、糸によるリフトアップを大きく分けると、以下の2つに分類されます。
- 糸でたるんだ部分を「引き上げる」方法
- 糸を埋め込んで組織を「引き締める」方法
糸で皮膚を引き上げる治療、いわゆる「フェザーリフト」や「スレッドリフト」は、たるんだ箇所を糸で物理的に引っ張り、たるみを改善します。
金の糸や韓国式美容鍼から派生したショッピングスレッドやリードファインリフト、ウルトラVリフトなどは、皮膚を引き上げるのではなく、糸を埋め込むことで組織を反応させ、それを利用して肌質をよくする効果をねらったもので、引き締めタイプの施術です。これらは、レーザー・高周波・超音波による引き締め術と同じような効果をねらったものと考えられています。
糸で皮膚を引き上げる治療、いわゆる「フェザーリフト」や「スレッドリフト」は、組織を引っかける部位の形状の違いによって、以下のような種類があります。
(1)糸のタイプによる分類
- トゲタイプ:とげ状のかえしが多数付いている糸
- コーンタイプ:円錐形のコーンが多数ついている糸
- ループタイプ:ループ(輪っか)状の糸
また、フローティングタイプ・固定タイプという留め方の様式由来の分類もあります。
(2)止め方の様式による分類
- フローティングタイプ:とげ状のかえしやコーンがお互いに向かい合うように反対方向を向いていて、組織を中央に引き寄せる方式
- 固定タイプ:骨や筋膜などの固定源(アンカー)に固定し、一方向に引き上げる方式。
ループタイプの糸も固定タイプに分類されるようです。
糸の素材では、以下のようにも分類できます。
(3)糸の素材による分類
- 溶けない糸:ポリプロピレンやゴアテックス製
- 溶ける糸:吸収性PDSやポリ乳酸
糸によるリフトアップ施術の効果と選び方
Q:たくさんの施術方法がありますが、どのような点がたるみを改善する上で重要になりますか?
境先生:以前からフェザーリフトは、手術直後に得られる引き上がり効果(リフトアップ効果)を後戻りさせないことが最も重要と言われており、学会や論文などでも後戻りの原因究明についてのものが多く見られます。
後戻りの原因として、糸の把持力(組織を引っかける力)が問題となったこともあります。トゲタイプの糸では、トゲが逆向けのように破壊される「バナナピール現象」の発生が問題となり、より丈夫なコーンタイプのものが開発されました。
また、引き上げた皮膚を固定する固定部の緩みが問題視されたこともあり、固定部をより強固にしようとする方法も数多く考え出されました。具体的には、筋膜上にシリコンシートやメッシュを載せて固定したり、骨に留める方法も多数報告されています。
しかし、固定が強固であればあるほど、顔の表情筋を動かすと糸に負荷がかかり、組織をひっかけている部分がゆるみやすくなります。そのため、以前から顏の動きに応じながら伸縮し、安静時には一定の張力で顏の形を保つような素材の糸が理想であると言われていました。
糸によるリフトアップの問題点
Q:糸を使ったリフトアップの問題点はどのようなところでしょうか?
境先生:比較的短期間、小さな改善を求められる場合には合格点を出せていますが、患者さん目線で考えた場合、切るフェイスリフトのような中長期的効果を求められる場合には、糸によるリフトアップは苦戦を強いられています。
具体的には、以下のような点が問題点です。
- 患者さんが術前に想像しているよりも効果が弱い
- 特に、顔を正面から見た時の効果に乏しく、効果の実感を得られない
- 長持ちせず、中長期的に効果が持続しない
特に、効果の持続時間が短く、たるみが再発する点が一番の問題だといえるでしょう。広告でよく目にする「老化による経年変化に応じて適宜追加が必要である」という考え方には、その意味を文字通り解釈すると、「糸によるフェイスリフトでは中長期的効果が望めない」という厳しい現実を覆い隠す隠れ蓑としての役割があると考えられます。
効果が長持ちする施術
Q:たるみを改善するための施術はたくさんありますが、最もリフトアップ効果があり、また効果が持続する施術はどれでしょうか?
境先生:数年後にも確実にある程度の効果が持続するのは、伸縮性のあるスプリングスレッドや、切るフェイスリフト(切る手術)です。特に伸縮性のある糸を使うフェイスリフト(スプリングスレッド)は、糸をうまくカーブさせて入れることにより、今まで効果が出せなかった顔の中央、正面からみたところまで効果を出すことができるため、持続性だけではなく、仕上がりの点でも大変優れた施術です。
顏の表情筋はよく動かす部位なので、長期的に効果を維持するためには、糸に伸縮性があり、伸び縮みすることが不可欠であることは明らかです。ちなみにスプリングスレッドの素材はポリエステル骨格・シリコンコーティング。「溶けない糸」です。
糸が解けると、例え失敗しても「放っておけばそのうち糸がなくなる」という点でリスクが低いのですが、糸が解ければ当然効果はなくなるので、持続性を求める場合には不適切です。
※スプリングスレッドについて詳しくは、『スプリングスレッドの効果とデメリットについて』をご覧ください。
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