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溶ける糸と溶けない糸のリフトアップ効果とメリット・デメリット
たるみを糸によって引き上げる「スレッドリフト」に使われる糸には、大きく分けると溶ける糸と溶けない糸があります。それぞれのメリットやデメリットについて、たるみ治療の実績が豊富な「六本木境クリニック」の境先生にお話を伺いました。
糸を使った切らないリフトアップ、スレッドリフトに使われる糸には、大きく分けると「溶ける糸」と「溶けない糸」の2種類があります。それぞれの糸を使ったリフトアップ施術にはどのような特徴があるのでしょうか。
溶ける糸によるリフトアップ施術
元々は溶けない糸を用いた施術が多かった糸によるリフトアップ施術ですが、近年は溶ける糸を用いたものが多く存在します。溶ける糸は植物性ポリマーや生分解性ポリマー(生分解性プラスチック)など、体内で分解・吸収される素材から作られています。この溶ける糸を使用した施術には以下のようなものがあります。
(1)ハッピーリフト
糸に切り込みを入れた「毛羽立ち」のある糸を使います。この毛羽立ちが組織を掴み、たるみを引き上げます。毛羽立ち型の糸だと、組織を掴む部分の面積が小さく、組織の把持力(組織を引っかける力)が弱い場合があります。
また、強度の面でも、上の図のように毛羽立ち部分が割けてしまう「バナナピール現象」が発生しやすいというデメリットがあります。
(2)シルエットリフト、3Dリフト
コーン型(円錐)の引っ掛かりが着いている糸を使用し、たるみを引き上げます。コーンタイプは組織をひっかける部分が糸を360度取り囲んでいるため、グリップ力が強く、また強度も高いのが特徴です。シルエットリフトは、溶けない糸を使う施術もあります。
(3)ミントリフト
糸に切り込みを入れるのではなく、糸にトゲを取り付けたような糸を使用します。それによって毛羽立ちタイプよりも強度が高く、組織の把持力が長持ちします。
(4)スレッド美容鍼(韓国式美容鍼・ショッピングスレッド・ウルトラVリフトなど)
髪の毛よりも細い溶ける糸が入っている針を皮膚に挿入し、引き抜くと、溶ける糸だけが皮膚に留まります。
まず、鍼を刺した刺激でお肌が引き締まり、リフトアップ効果を発揮します。その後、挿入された糸が真皮層にある線維芽細胞などを刺激して、皮膚のコラーゲンやエラスチンの産生を促進することでお肌にハリが生まれます。
溶ける糸によるリフトアップのメリット
溶ける糸は、数ヶ月から2年ほどで体内に吸収されて消えていくと言われています。新たなたるみやシワ、施術後しばらくして後戻りをした場合など、再び施術を受けることも可能です。施術による後遺症や失敗が心配な人や、体内に異物があることに抵抗を感じる人は、溶ける糸を使った方が、心理的な安心感があるでしょう。
溶ける糸のデメリット
糸が溶けるとリフトアップ効果は弱まるため、実感できる効果の持続期間が1年にも満たないものが多いと言われています。先述の通り、溶ける糸を使ったリフトアップは、繰り返し施術を受けることも可能ですが、言い換えるとそれは、溶ける糸によるリフトアップは、あくまでも一時的な改善策であるということでもあります。
溶けない糸のリフトアップ施術
溶けない糸を使うリフトアップ法の代表的なものを以下にご紹介します。
(1)スプリングリフト
伸縮性のある糸、「スプリングスレッド」を使用し、リフトアップを行う施術です。伸縮しない従来の糸は、口周りなどのよく動かす部分には使用できないか、使用してもすぐに緩んでしまうという問題がありました。それを解消するため、スプリングスレッドが開発されました。スプリングスレッドにはコグ(突起)がついており、周囲の組織を強力に把持します。
(2)シルエットリフト
溶ける糸の箇所でご紹介したシルエットリフトは、溶けない糸でも実施されます。溶ける糸と同様、コーン型(円錐)の引っ掛かりが着いている糸を使用します。
溶けない糸のメリット・デメリット
溶ける糸はリフトアップ効果が1年ほどで低下するのに対して、溶けない糸は持続期間が長いのが大きなメリットです。
デメリットは、溶ける糸のように放置してもなくならないため、失敗した時は糸を取り出す手術が必要となります。しかし、糸を取り去りたいと希望しても、施術の状態や糸の形状によっては、皮膚組織を頑強につかんでいるため、糸を抜き出せない場合もあります。
溶ける糸、溶けない糸の違いは、実際にはどうなのか?
溶ける糸、溶けない糸には上述のような特徴があると言われていますが、本当なのでしょうか。疑問点を、「六本木境クリニック」院長、境隆博先生にお聞きしました。
境先生は、形成外科医および美容外科医としてたるみ治療の豊富な経験を持ち、刺青除去手術などにおいて日本で屈指の技術力をお持ちのドクターです。
ドクターに聞く!溶ける糸、溶けない糸について
Q:近年は溶ける糸を使ったリフトアップの治療が増加しているようです。溶ける糸の方が安全で手軽な印象を受けますが、本当にそうなのでしょうか?
境先生:溶ける糸というと、「安全性が高く、術後にトラブルが発生しても、放っておけば糸が溶けるから大丈夫」と思っている方が多いですね。しかし、他院で溶ける糸の施術を受けた患者さんから、「糸が飛び出てきてしまった」というご相談はよくいただきます。いつ施術を受けたか聞くと、5年前など、かなり前のことも珍しくありません。
よく溶ける糸は本当にすぐに溶けるようですが、当然、効果もすぐになくなってしまいます。割と長持ちの溶ける糸ですと、数年後でも糸が残っているというケースが散見されます。溶ける糸は、確かに「溶ける傾向がある」というのに間違いはないのでしょうが、「必ず溶ける」ということを保証しているわけではないようです。
また、安全性という意味では、「溶けない糸が危険」というのは間違いです。溶けない糸の素材はさまざまです。たとえばスプリングスレッドはシリコン製ですが、シリコンは感染や異物反応のリスクが非常に低い素材です。溶ける・溶けないという糸自体の問題よりも、小さな毛などの異物の混入の方がはるかに感染症の危険を高めるので、術前に剃毛・洗浄を丁寧に行うなど対策をきちんと行うことが重要です。
Q:溶ける糸は持続性が低いと言われますが、効果はどのくらい続くのでしょうか。
境先生:すぐに溶ける糸は、たるみの引き上げ効果は1カ月後くらいがピークで、すぐに効果がなくなってしまうようです。比較的長持ちの糸でも、効果は半年くらいしか続かず、糸だけ数年後にも残っている、というケースが多い印象です。
私も以前は、溶ける糸によるリフトアップを行っていましたが、「2ヶ月くらいで元に戻ってしまった」というクレームが多く、今は溶ける糸のリフトアップはやっていません。
おすすめの糸は?
Q:今は溶ける糸によるリフトアップは行っていないとのことですが、やはり溶けない糸のリフトアップの方がおすすめでしょうか?
境先生:効果が持続しやすいのは、当然溶けない糸ですが、「溶けない糸なら効果が長持ちする」というわけではありません。顔は表情を変えることが多く、伸縮性のない糸だと、組織を把持する突起部分が壊れたり、引っ掛かりが取れてしまうことがあります。
そのため、数年後にも確実にある程度の効果が持続するのは、伸縮性のあるスプリングスレッドや、切るフェイスリフト(切る手術)です。しかし、切るフェイスリフトは傷跡が残るなど、デメリットも多くなります。また、顔の側面には効果がありますが、ほうれい線など、顔の正面のたるみには効果が薄いという欠点もあります。
上図のような、コグと呼ばれる強度の高い突起がつき、伸縮性のある糸を使うフェイスリフト(スプリングスレッド)は、糸をうまくカーブさせて入れることにより、今まで効果が出せなかった顔の中央、正面からみたところまで効果を出すことができるため、持続性だけではなく、仕上がりの点でも大変優れた施術です。
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