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眼瞼下垂症の手術方法
まぶたは繊細で複雑な構造をしており、目立つ部位だけに、眼瞼下垂症の手術や治療では機能面の回復に加えて仕上がりも気になります。ここではドクター監修のもと、眼瞼下垂症の手術や治療方法、後遺症や失敗症例などについて解説します。
まぶた(眼瞼)が垂れ下がる、上がりにくくなるなどの症状によって、物が見えにくくなる眼瞼下垂(がんけんかすい)。まぶたはデリケートであると同時に目立つ部分のため、治療や手術を受ける際は、十分な注意が必要です。
そこで今回は、前回の『眼瞼下垂の原因と症状』に続き、眼瞼下垂の手術や治療方法の種類、特徴、術後に後悔しないための注意点などについてご紹介していきます。きちんと確認し、治療や改善に役立てましょう。また、記事最後で眼瞼下垂症のセルフチェックもご紹介しています。
眼瞼下垂症の手術は難しい
まぶたは非常に繊細で複雑な構造をしている部位であると同時に、顔のなかでも目立つため、わずかな左右差があっても気になります。そのため、眼瞼下垂の手術は、「目が十分に開くようにする」という機能面だけでなく、左右のバランスや二重の形など、外見上の面においても患者の満足を得る必要があり、非常に難しい治療だと言えます。
しかも、まぶたは腫れやすいため、手術中や手術直後に結果や効果を判定することが困難です。また、手術自体は成功しても、眼瞼下垂の手術を行ったことで、眉毛を上げて目を開く必要がなくなります。術後は次第に眉毛の位置が下がり、余った皮膚が二重の線に覆いかぶさるため、手術直後に比べて二重の幅は狭くなっていきます。そうすると目が手術直後より少し細くなるため、「後戻りをした」と感じる患者も少なくありません。
なかには片側のみ眼瞼下垂症の手術を行うケースもありますが、その場合はもう片方の眼瞼下垂症が手術中から悪化することもあります。このことを、「Hering(へリング)の法則」や「Hering(へリング)現象」と呼びます。そのため、まぶたの片側手術を行う場合には特に注意が必要です。
眼瞼下垂症の手術の方法
眼瞼下垂症の手術の方法には、大別すると以下の3種類があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
- 眼瞼挙筋腱膜前転術(がんけんきょきんけんまくぜんてんじゅつ)
- 眼瞼挙筋短縮術(がんけんきょきんたんしゅくじゅつ)
- 前頭筋(ぜんとうきん)吊り上げ術
眼瞼挙筋腱膜前転術(がんけんきょきんけんまくぜんてんじゅつ)
眼瞼挙筋腱膜前転術とは、眼瞼挙筋腱膜とつながっている眼窩隔膜(がんかかくまく)を丁寧に剥離・前転(はがして前方移動させること)し、眼窩隔膜や挙筋腱膜(きょきんけんまく)をまぶたの縁にある瞼板(けんばん)という軟骨に固定する手術です。
眼瞼挙筋(がんけんきょきん)短縮術・眼瞼挙筋腱膜(けんまく)短縮術
眼窩隔膜(がんかかくまく)を剥離するのが前述の眼瞼挙筋腱膜前転術であるのに対し、挙筋腱膜をミュラー筋から剥がして前転(前方移動)して、瞼板に固定する方法を取るのが、眼瞼挙筋腱膜短縮術です。
また、眼瞼挙筋短縮術は、まぶたの裏側に存在する薄い膜、結膜(けつまく)から挙筋腱膜とミュラー筋をまとめて剥がして瞼板に前転固定します。
前頭筋(ぜんとうきん)吊り上げ術
前頭筋吊り上げ術は、眉毛を上げる筋肉である前頭筋(ぜんとうきん)とまぶたをつなぎ、眉毛を持ち上げることでまぶたが開くようにする手術です。
上図のように特殊な糸を使うこともありますが、太腿外側の筋膜やコメカミの筋膜を取り出し、それを使って吊り上げることが多いので、「筋膜吊り上げ術」とも呼ばれます。
この方法は主に、『眼瞼下垂の原因と症状』でご説明した先天性眼瞼下垂や、眼瞼挙筋の状態が著しく悪い重症の場合に用いられることが多いです。
また、老人性眼瞼下垂でも重症例には前頭筋吊り上げ術を行うことがあります。理由は、老化によって自体の筋力が低下している場合、上述の眼瞼挙筋腱膜前転術を行うと、上眼瞼が眼球から浮いてしまうことがあります。そうすると、涙の分泌量が少ない高齢者はドライアイ様の症状が強くなってしまうためです。
形成外科では眼瞼挙筋腱膜前転術(がんけんきょきんけんまくぜんてんじゅつ)が好まれることが多く、眼科では挙筋短縮術(挙筋腱膜短縮術)が好まれる傾向にあるようです。
眼瞼下垂症の切らない手術の方法
眼瞼下垂症の手術においては、「切らない手術」を宣伝文句にしているクリニックもあります。実際にはまぶたの裏側の結膜を切る手術を採用しているところもあり、厳密に「切らない」とは言えないケースもあります。
しかし、最近では本当に切らない眼瞼下垂の手術も増えてきています。切開して実際に内部構造を見て手術するのではなく、結膜側からミュラー筋を縫い縮める方法(ミュラー筋タッキング術)や挙筋腱膜を短縮する方向に埋没法を行います。症例によってはよい効果があり、術後の腫れやダウンタイムがほとんどないなどのメリットもあります。
これら「切らない眼瞼下垂症手術」のデメリットは、まぶたの裏側の結膜を傷つけたり、変形させるおそれがあるため、違和感や異物感などが長続きすることです。特に、結膜からのタッキングは高率に肉芽腫ができ、結膜炎を併発するため、皮膚側からのアプローチを優先させた方が無難であるという眼科からの意見もあります。保険が適用されない自由診療による治療が多くなりますが、効果の持続期間については意外に長いという意見もあるようです。
眼瞼下垂症以外のまぶたのたるみ取り治療
老化が原因の「老人性眼瞼下垂(加齢性眼瞼下垂)」の場合、眼瞼下垂とともに、まぶたの皮膚がたるむ「眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)」を併発しているケースが増えます。眼瞼皮膚弛緩症の治療については、眉下切開などを行うこともあります。
眼瞼下垂症セルフチェック
まぶたが重い、肩こりや片頭痛、眼精疲労がつらい…といった症状のある方は、眼瞼下垂症かもしれません。
- まぶたが重く感じる、開きにくい、たれる
- おでこに深いシワができている
- 普段、コンタクトレンズを装着している
- 目をこするクセがある
- 昔と比べて目が小さくなった、または目と眉毛の間隔が広がってきている
- 頭痛や肩こり、眼精疲労、ドライアイなどの症状がある
上記のような症状が複数ある場合は、以下のテストを試してみましょう。
- まっすぐ前を向き、軽く目を閉じる
- 両眉の上に人差し指を載せ、眉毛が動かないよう固定する
- その状態でまぶたを上げ、目を開く
目を開いたときにおでこが動いたり、指の力に反して眉毛まで上げてしまう人は、眼瞼下垂症の可能性があります。できれば鏡の前で行い、目を開いたときに瞳孔にまぶたがかかっていないか確認しましょう。
※このセルフチェックはあくまでも簡易判定です。気になる症状がある人は、すみやかに医師の診察を受けるようにしましょう。
まとめ
眼瞼下垂症の手術方法についてご紹介しました。眼瞼下垂症の手術には、以下のようなものがあります。
- 眼瞼挙筋腱膜前転術
- 眼瞼挙筋腱膜短縮術
- 眼瞼挙筋短縮術
- 前頭筋吊り上げ術
- 切らない眼瞼下垂手術(ミュラー筋タッキング術や埋没式挙筋短縮法など)
手術法のメリットやデメリット、術後に起きるリスクなどしっかり説明を受けたうえで手術に臨みましょう。
眼瞼下垂症の手術は「物が見えにくく、日常生活に支障をきたしている」「保険適用の形成外科や眼科で手術を受ける」など、一定の条件を満たせば健康保険が適用できます。一方、「眼瞼下垂手術のついでに、両目をキレイな二重にしたい」などの要望があったり、美容整形外科での手術は保険が適応されないケースもあります。どちらを選ぶかで費用がかなり変わってきますので、詳しくは、『眼瞼下垂手術で保険は適用になるの?』をご覧ください。
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