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大人のアトピー性皮膚炎の特徴と治療、保湿ケアについて

更新日:2017.11.21
公開日:2016.05.20
ドクター画像
この記事の監修者
銀座禅クリニック 院長 コッツフォード 良枝

大人のアトピー性皮膚炎では、どのような治療が行われるのでしょうか?また、アトピーの治療には、ステロイド外用薬もよく用いられますが、ステロイドは恐い薬ではないのでしょうか?ドクター監修の記事で解説していきます。

子供の頃にアトピー性皮膚炎を発症し、成長過程で改善されていくケースはたくさんあります。しかし最近は、大人になっても症状が改善しない人や、一度治ったのに再発する人が増えています。そうした大人のアトピー性皮膚炎の特徴や治療法、自宅での保湿ケアについてご紹介します。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥とバリア機能の低下という生理学的な皮膚の異常に、さまざまな刺激やアレルギー反応が加わって引き起こされることが多いとされています。アトピー性皮膚炎を引き起こす要因となるのは、以下のようなものです。

  • 細菌やウイルス、カビ、ダニ、ハウスダスト、花粉
  • 食べ物によるアレルギー(乳幼児に多い)
  • 発汗や汚れ
  • 睡眠不足や偏食など、生活習慣の乱れ
  • 紫外線
  • 衣服による摩擦
  • 化粧品による刺激
  • ストレス
  • 妊娠や出産など、ホルモンバランスの乱れ

また近年は、フィラグリンという、肌を保湿する物質を出す遺伝子が変異・欠損していることでも起こることが判ってきています。

大人のアトピー肌の特徴とは

大人のアトピー性皮膚炎は顔や首、胸、背中など上半身に湿疹が起こることが多く、くり返しかきむしってしまう部分にできやすい傾向があります。身体の左右対称に現れることが多く、肌の水分が少ない乾燥した状態からフケのように表面がカサカサにはがれ落ちるもの(鱗屑:りんせつ)、かさぶた状のもの(痂皮:かひ)、赤い腫れ(紅斑:こうはん)やぶつぶつ(丘疹:きゅうしん)、じくじくとただれたびらんなど、さまざまな症状があります。

アトピーは完治するものではない

アトピー性皮膚炎には、多くの場合、その人が生まれつき持っているアレルギー体質(アトピー素因)が関係しており、現在のところ、病気そのものを完治させる治療法がありません。しかし、適切な薬を適切な方法で塗り、正しいスキンケアを続けることで、症状が出ないようにコントロールすることは可能です。

日本皮膚科学会では、治療で目指すゴールを、次のように設定しています。

  1. 症状はないか、あっても軽く、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない
  2. 軽い症状は続くが、急激に悪化することはまれで、悪化しても持続しない

外用療法で使われる薬

アトピー性皮膚炎の治療は、「薬による治療」「悪化要因の検索と対策」「スキンケア」という3本柱で行っていきますが、中でも、重要なのが、炎症を抑えるための薬物療法です。治療に使われる塗り薬には、次の3つがあります。

ステロイド外用薬

「副腎皮質ホルモンを含む免疫抑制剤で、免疫の働きを抑えることで、炎症やかゆみを抑えます。炎症を抑える強さによって、5段階に分類でき、症状の程度や使用期間、使用する部位などを考慮して使い分けます。

カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)

副腎皮質ホルモンを含まない免疫抑制剤で、大人用と子供用があり、大人用の炎症を抑える強さは、ストロングクラスのステロイド外用薬と同程度とされています。ステロイド剤では、副作用が出やすい顔などによく用いられます。

非ステロイド系消炎外用薬

炎症やかゆみを抑える効果はさほどないため、単独で使うと、長期間使用することになり、かぶれを起こしがちです。このため、アトピーの治療で使用される場面は、あまりありません。

なお、塗り薬による治療の補助療法として、飲み薬(内服薬)が併用されることもあります。飲み薬には、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)や、シクロスポリン、ステロイド内服薬、漢方療法などがあります。

アトピー性皮膚炎の人は、バリア機能が低下していたり、掻き壊して皮膚に傷があったりするため、皮膚の感染症を併発してしまうことがあります。その場合は、抗生剤の投与など、感染に対する治療も必要です。

感染症を併発していたり、皮膚炎が重症で、日常生活に支障が出るほどだったりする場合は、入院して治療をする例もあります。入院治療には、外用薬を適切に使用する、生活習慣の改善、清潔な環境で過ごせる、ストレス環境から離れられるといった効果があり、「教育入院」という目的もあります。

アトピー性皮膚炎の治療で使われるステロイドについて

ステロイド剤というと、「副作用があって恐い」など、偏ったイメージがあり、敬遠する人も少なくありません。

たしかに、ステロイド外用薬は局所性の副作用が出ることはありますが、正しく使えば安全な薬です。また、現時点で、もっとも早く炎症を抑える効果があり、炎症によるかゆみを抑え、症状の悪化を防ぐのに大変役立ちます。

副作用が恐いからといって、少ししか使わなかったり、ちょっと改善しただけで使うのを勝手にやめたりすると、症状が悪化して使用期間が延び、かえって使用量が増えてしまうことがあります。使用する際は、医師の指示に従って、必要な量を必要な期間使い続けるようにしましょう。

アトピー性皮膚炎は生活習慣からのケアも必要

アトピー性皮膚炎の治療では、日頃のスキンケアや生活習慣の改善も大切です。

身体を清潔に保つ

アトピー性皮膚炎の方の場合、なによりも身体を清潔に保つことが大切です。血行をよくするためにも、できれば毎日入浴するか、シャワーを浴びましょう。ただし、洗浄力の高い洗顔料やシャンプーは皮膚のバリア機能を低下させてしまいますので、低刺激のものを選んでください。また、入浴後はすみやかに保湿剤を塗りましょう。そのほか、皮膚をかきむしって悪化させないよう、爪を短く切るなどの工夫も大切です。

スキンケアや化粧について

アトピー性皮膚炎の人の角質層は、セラミドという保湿成分が健康な人よりも少なくなっています。肌に必要な保湿成分は補いつつ、防腐剤や界面活性剤など余計な添加物が入っていない基礎化粧品やメイクアイテムでシンプルなスキンケアやメイクを行いましょう。

詳しくは、アトピー肌の化粧品の選び方・使い方をご覧ください。

紫外線対策もしっかりと

バリア機能が低下したアトピー肌は、紫外線による刺激にも弱い状態です。外出する時は日焼け止めクリームを塗ったり、日傘や帽子を使用するなど、紫外線対策を万全にしましょう。

身に付けるものについて

身体同様、衣服の清潔感も大切にしましょう。肌触りも重要です。湿疹ができているときは通気性のよい肌着をつける、夏は汗がこもらないよう吸湿性のよい素材を、冬は保温性の高い素材を選ぶ、手足やウエスト部に締め付け感の少ない衣類を選ぶ、皮膚を刺激する合成繊維は避ける、なども大切です。

住まいの掃除や洗濯もこまめに

ダニやカビの温床となる絨毯やソファー、布製品の使用をできるだけ避け、掃除機だけでなく布拭きなどをまめに行ってハウスダストを除去するよう努めましょう。衣類もこまめに洗濯することが大切ですが、柔軟剤や漂白剤などの使用は避け、すすぎは十分行いましょう。

栄養バランスのとれた食事

皮膚の材料となるタンパク質や、皮膚の新陳代謝をスムーズにするビタミン・ミネラルを中心に、バランスのとれた食生活を心がけてください。食事では補えない栄養素はサプリで補うのもよいでしょう。また、腸内環境を整え、便秘を改善することも大切です。一方、糖分・脂肪分の過剰摂取や、刺激の強い香辛料、アルコール、トランス脂肪酸などの取り過ぎは、かゆみを増やすことがありますので気をつけましょう。

食事について詳しくは、『大人のアトピー改善を目指す食事』もご覧ください。

ストレスをコントロールする

上記のようにアトピー性皮膚炎の人は日頃のスキンケアや生活習慣において気をつかうことがたくさんありますが、それがストレスになってしまうと症状の悪化につながります。リラックスしたり、夢中になれる趣味を見つけるなど、うまくストレスをコントロールする術を見つけましょう。

まとめ

大人のアトピー性皮膚炎の特徴や治療法、日常生活における注意点などをご紹介しました。子供の頃に発症しても、成長するにともない改善に向かうことの多いアトピー性皮膚炎ですが、近年は大人になっても完治しない人や、一度治ったのに再発する人が増えています。医師の指導に従って薬物療法を適切に行うとともに、症状を改善するために、次のことを心がけましょう。

  • 肌の清潔・保湿を心がける
  • 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとる
  • 栄養バランスのとれた食生活を送る
  • 肌を刺激しない素材の衣類を着る
  • こまめに掃除し、部屋を清潔にする
  • 爪を短くし、掻き壊さないようにする
  • ストレスをためない

日々の積み重ねにより症状をコントロールし、QOL(生活の質)の向上に努めましょう。

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